それでは本日は、いよいよ来月から開始となるインボイス制度の2割特例について、解説をしていきます。
おそらく皆さん、キーワードとしてはこの2割特例、聴いたことあるんじゃないかなと思います。
ただ、その内容をどれだけ正確に理解しているか、ということについてはいまいち自信がないのではないでしょうか。
本日の記事を見ていただくことで、インボイス制度の2割特例が一体だれのための、どういう制度なのか、またあなたにどんなメリットがあるのかが理解できるようになりますので、ぜひ最後までご覧ください。
インボイス制度2割特例の恩恵を受けるのは誰?
まず、この制度の恩恵を受けるのは誰でしょうか?
これは、今まで消費税を税務署に納めていなかったんだけれども、今年の10月からインボイス登録事業者になって、新たに消費税を税務署に納めることを選択した事業者さんなんですね。
で、2割特例って20%の特例っていうことですよね。じゃあ、特別な例ということは、原則がまずはじめにあるはずです。
特例じゃない、基本ルールということです。
それがなにかというと、消費税の計算方法のルールになります。
消費税の超キホン的な計算ルール
超基本的な消費税の計算ルールは、預かった消費税から預けた消費税を差し引いた差額を納めるということです。
例えば、売り上げた際にお客さんから10円の消費税を預かり、仕入れの際に仕入れ先に3円の消費税を預けたとしましょう。となると、差額の7円が、税務署に納めるべき金額になります。
これが原則的な計算方法です。
もう一つの従来からあるルールで、簡易課税という計算方法もあります。
これは簡易、つまり簡単な消費税の計算方法ということですね。何が簡単なのかというと、消費税を納める計算式が、預かった消費税×10%~50%で済むというものです。
この%は業種によって分かれます。
これら従来からある計算方法に加えて、今回新たに出てきたのが2割特例です。
2割特例の計算ルール
この場合の計算方法は、お客さんから預かった消費税10円の内、問答無用でその20%だけを納めればいいよ、つまり2円だけ納めればいいよという計算方法になります。
ちなみに先ほど簡易課税は業種によって10%~50%と言いました。10%の業種は、卸売業なので、卸売業は2割特例より簡易課税の方が得ですね。なぜなら、預かった10円の消費税のうち、10%である1円だけ税務署に納めればいい、ということになるからです。
なお、簡易課税では小売業に関しては預かった消費税の20%を納めればよいということになりますので、小売業者に関しては、簡易課税でも、2割特例でも、結論は同じ金額になります。預かった消費税10円のうちの2割ですから2円だけ納めればよいよということですね。
さて、2割特例の基本的な意味がわかったところで、誰が対象になるのか、をお話ししていきます。
インボイス制度2割特例の対象者とは?
対象となるのは、令和5年の時点で消費税を納める義務のない、いわゆる免税事業者の方で、10月からインボイス制度の登録を受ける方になります。
なので、そもそも令和5年に消費税を納める義務のある、いわゆる課税事業者の場合には、令和5年の申告で2割特例は使えません。
ただし、翌年以降、免税事業者になる事業期間については、2割特例で消費税を計算することができます。
どういうことか解説します。
2年前の売上が基準となる
基本的に消費税を納める義務があるか、ないかというのは、2年前の事業の売上が1000万円以下かどうかで判断します。
なので、令和5年の申告が免税事業者ということは、令和3年の売上が1000万円以下であることを意味します。
なお、これは起業していない期間でも売り上げが0円ということで1000万円以下である、という取り扱いになります。
で、令和5年が免税事業者でインボイス10月から登録すると、令和5年の確定申告では、10月から12月の3か月分について、2割特例で計算ができます。
では、令和6年もこの2割特例で計算できるかというと、これも判断が必要です。
なぜなら、令和6年の消費税の申告に関しては、その2年前である令和4年の売上が1000万円以下かどうかを確認する必要があります。
これが1000万円以下なら、本来令和6年は、インボイス登録をしなければ免税事業者だったわけですから、2割特例で計算していいよということになります。
一方、令和4年の売上が1000万円を超えていたら、そもそも令和6年は消費税を納める必要がある課税事業者ですので、2割特例は使えません。この場合には、消費税の原則課税、または簡易課税で計算をすることになります。
2割特例の届出は不要
では、2割特例を採用して消費税の計算を行う場合には、なにか届け出が必要かというと、これは不要です。消費税の申告時に、選択するだけということになっています。
また、2割特例が使える期間は、個人事業主の方に関しては令和8年末までです。ただ、先ほどお伝えした通り、申告する年の2年前の売上が1000万円を超えている場合には、使用することができませんので、ご注意ください。
簡易課税の届出タイミングの注意点
なお、簡易課税を選択したい場合には、このケースだと令和6年中に簡易課税を選択します、という届出書を出さなければならないので、注意が必要です。
これ、正直税理士でも気を付けないと間違えそうなポイントなので、正直これを納税者さんが自分で把握して管理するって、現実的に難しいんじゃないかな、と個人的には感じています。
もし少しでも不安があったら、税理士にご相談ください。
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