こんにちは。栃木県真岡市の税理士、元山りょうです。
さて今回は、2年連続までであれば、年収の壁130万円を超えても扶養が外れなくなる、というニュースについて解説します。このニュース、現在新聞やテレビを騒がせてますね。まずは新聞各社見出しを見ていきましょう。
各新聞社見出し
9/23 毎日新聞『「年収の壁」130万円超え2年連続まで扶養OK 10月から 政府方針』
9/24 日経新聞『「年収の壁」130万円超、2年まで扶養に 厚労省方針、来月から』
9/24 朝日新聞デジタル『130万円の壁、2年は扶養内 社会保険料めぐり 厚労省検討』
9/25 読売新聞オンライン 『岸田首相、経済対策「5本柱」発表…「コストカット型から歴史的転換を図る」』
今回のニュースの概要
さて、まず初めに今回のニュースの概要を簡単にお話しします。
年収130万円の壁というのは、従業員100人以下の企業で、年間収入が130万円(月額にすると108,333円)を超えると、第三号被保険者が配偶者の扶養から外れて、自分で国民年金保険料を負担しなければならない、というものです。
ただ、今回ニュースになっているのはこの130万円を2年連続までだったら超えたとしても、配偶者の扶養から外れないので、第三号被保険者が国民年金保険料を負担しなくていいよ、というお話になります。
第三号被保険者というのは、イメージしやすいのはサラリーマンの妻で専業主婦でパートに出ているという一昔前のイメージです。この方は夫の会社の社会保険に加入できるため、自分で国民年金保険料を負担しなくて良いんですね。
では、今回のニュースの理解を助けるために、第三号被保険者以外の第一号、第二号被保険者の概要もお伝えしておきます。
公的年金制度の種類
第一号被保険者とは
農業や自営業者、学生が当てはまり、年金保険料は自分で全額負担します。また、年金制度のいわゆる2階、3階の上乗せ部分は国民年金基金や確定拠出年金で自分で備えなければなりません。
第二号被保険者とは
いわゆるサラリーマンが当てはまり、保険料は勤務先の企業と折半なので半額で済みます。また、2階部分は厚生年金、3階部分は確定拠出年金などがあります。
第三号被保険者とは
いわゆる専業主婦、サラリーマンの妻または夫が当てはまります。年金保険料の納付負担なく、将来の年金が受け取れます。
ということで、1号が一番年金保険料の負担が多く、2号が半分、3号が全く負担なしという、号が増えるごとに、負担が軽くなる仕組みになっています。
第三号被保険者の特徴
それではここで第三号被保険者の特徴を深堀しましょう。
そもそもなぜ負担する年金保険料が0円なのに、将来の年金が受け取れるというメリットが与えられているのか?そもそも、なぜこのような制度が創設されたのか?興味がわきませんか?
この興味を深堀りすべく、第三号被保険者の創設の歴史を見ていきましょう。
第三号被保険者の歴史
第三号被保険者制度は、遡ること38年前、1985年に創設されました。この制度の創設前も、専業主婦は国民年金に加入できましたが、任意でした。なので、加入している人としていない人がいたんですね。
そうなると、加入をしている、していないで老後の年金額に格差が生じることになります。もちろん、払っている人はもらえるし、払っていない人はもらえない。
このときの問題点として、任意加入していない場合には、障害年金を受給できず、もし離婚した時には年金がないという問題もありました。
当時は夫が働き、妻が家庭を守るという考え方が主流でしたが、外で働いて収入を得られない専業主婦の年金の権利を何とか確保できないか、というのが制度創設の目的でした。
※参考文献 大和総研『第3号被保険者制度は時代に合わない?』
第三号被保険者のメリットと問題点
この第三号被保険者のメリットといえば、いわずもがな、国民年金保険料の負担が0円、タダであるということです。(年収130万円以内である必要がある)
ですが、共働き家庭の奥様や、単身女性の方から見たらこの負担0円というのは、単刀直入に言って『ずるい』という不公平感につながりました。
※ただ、世帯収入と世帯負担で考えた場合には、受け取る年金総額は同じになるので、結局は世帯のうち、だれが負担しているか、だけの話になるため本質的にはずるくはない。
※参考文献 ファイナンシャルワールド【簡単解説】「専業主婦はタダで年金をもらえて『ズルい』」という理論は「感情論」? 実際どうなの?
第三号保険者数の推移
なお、1985年からスタートした第三号被保険者の数は、1990年代の1200万人超をピークに下がり続け、現在では700万人程度に減少しており、今後も減少傾向が続くと予測されています。
※参考文献 西日本新聞 『 国民年金の第3号被保険者数の推移 – 「年収の壁」対策案、「106万円ライン」は手つかず 社会保険料負担優遇に不公平感も 第3号被保険者制度の抜本改革急務 – 写真・画像(2/2)』
今回のニュースの論点
では、今回のニュースの論点をもう一度整理しましょう。
ここまでの話で、第三号被保険者は年収130万円以内であれば、年金保険料の自己負担がないということでした。となると、年収を130万円以内に収めようという動機が働きます。
なお、130万円を超えてしまうと、ざっくり30万円くらい手取りが減る計算になります。なぜなら、国民年金保険料を支払う必要が出てくるからなんですね。
これをカバーするためには、年収を160~170万円以上にする必要が出てきます。
なので、パートの方が年末に、働き控えでシフトを減らすということが起こります。ですが、ただでさえどの業界も人手不足なので、本当は働いて欲しいんですね。
そこで政府は、来月から、年収130万円を2年連続までなら超えたとしても、サラリーマンの夫の扶養から外しませんよ、ということを言っているわけです。これにより、130万円の収入を超えたとしても、今まで通り年金保険料の負担は0円のまま、ということになります。
扶養内でいるための要件
なお、収入が130万円を超えても扶養でいるためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
①勤め先の企業が一時的な収入アップであることを証明(簡素な書類)する
②配偶者の健保組合が扶養から外さないと判断する
まとめ
なお、2年後の2025年には、社会保険の適用拡大。第三号被保険者の見直しなどの方向性が決まっているようです。
年金制度の維持のため、国民の負担増は避けては通れないものなのでしょうか。あなたはどう思われますでしょうか?
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