インボイス制度、改めて初心者向けに解説

こんにちは。栃木県真岡市の税理士、元山です。

さて今回は、インボイス制度超入門ということで、

来月10月から制度がスタートする、インボイス制度について初心者向けに解説していきます。

インボイス制度開始まで10日を切ってはいますが、いまだに「インボイス制度って結局何なの?」という質問を受けることがあります。

インボイス制度がややこしい理由として、基本ルールに対して、いろんな批判をかわすために例外ルールがもりだくさんなんですね。なので、我々専門家であるはずの税理士も情報の整理に苦労していますし、実際の顧問先についてもどの顧問先にどの例外ルールが使えるのか?を念入りに確認しなければならない事態となっています。

さて、そんなインボイス制度について、まずはそもそもインボイス制度って何なのか?どういう仕組みなのか?

ということについて解説していきます。

まずはインボイス制度の理解のために、その基本となる消費税の仕組みを理解しておく必要があります。

ですので今回は、消費税のキホンの仕組みについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

そもそもの消費税を納める仕組みとは

まず一つ目の質問ですが、あなたは消費税を国に支払う必要がある人ですか?

どうでしょう。

例えばあなたが文具店で税込み165円のボールペンを買ったときに、税込みの金額を文具店に払っていますよね。でも、その消費税分15円を、わざわざ税務署に払いにいきますか?行きませんよね。

ということは、あなたが文具店に支払った15円の消費税って、誰が税務署に払ってくれるかというと、文具店なんですね。

国に消費税をおさめなきゃいけない人のことを納税義務者といいますが、文具店は消費税の納税義務者であって、ボールペンを買ったあなたは消費税の納税義務者ではありません。だって税務署に払いにいかないですよね?

基本的には先ほどの例で行くと、文具店は税込み165円のうちの消費税15円を国に納めます。

でも、ちょっと待ってください。

文具店はボールペンを卸業者から仕入れるときに、税込み110円を支払っているとしましょう。

となると、文具店は卸業者に10円分の消費税を支払っているわけです。

この10円の消費税は誰が国に納めるかというと、卸売業者です。

さて、文具店に話を戻すと、仕入れたときに10円を卸売業者に支払い、売った時にあなたから15円の消費税をもらっているわけです。

ここで話を分かりやすくするために、消費税を預かっている、預けているというイメージを持ってください。

なお、専門的な話で消費税はそもそも預り金だとか、そうじゃないとかいう議論がありますが、ここではややこしいので無視します。

さて、文具店はあなたから預かった消費税15円から、卸売業者に預けた10円の消費税を差し引いた差額の5円を国に支払うことになります。

これが消費税の基本的な仕組みです。

つまり、売った時に預かった消費税から、仕入れたときに預けた消費税を差し引いた差額を、文具店は国に納めますということですね。

インボイスが発行できる、できないことによる影響

ここからは、卸売業者がインボイスを発行できる場合と、できない場合で、文房具店が税務署に納める消費税がどのように変化するのか?です。

パターン⑴

まずはパターン⑴は、ボールペンの卸売業者が10月以降、インボイスを発行できる事業者だったらどうなるか、というお話です。

実は結論を先に行ってしまうと、卸売業者からインボイスを発行してもらった文房具店は、あなたに打ったボールペンの消費税分15円から、卸売業者に払ったボールペンの10円分の諸費税を差し引いて、5円を税務署に納めればいい、という同じ結論になります。

パターン⑵

ではパターン②で、もし仮にボールペンの卸売業者が、インボイスを発行しない事業者だったら、文房具店が税務署に納める消費税額がどのように変化するのか、見ていきましょう。

まず、文房具店はあなたから15円の消費税を預かっています。これは同じです。

そして、卸売業者に10円分の消費税を支払いました。しかし、インボイスは発行してもらえませんでした。なぜなら、卸売業者はインボイス登録をしていなからです。

この場合、文房具店はあなたから預かった15円から、卸売業者に支払った消費税の10円分を差し引くことができません。つまり、あなたから預かった15円をまるまる税務署に納めなければならなくなるのです。

もし卸売業者がインボイスを発行できたなら、文房具店が税務署に納める金額は5円で済んだのですから、10円も多く消費税を納税しなくてはならなくなりましたね。

このように、文房具店がインボイスに登録しているかしていないかにかかわらず、仕入れ先からインボイスを発行してもらえなかった仕入については、消費税の支払から差し引くことができません。

これが、インボイス制度の仕組みです。

となると、文房具店はどのような行動をとるでしょうか?少し一緒に考えてみましょう。

インボイスをもらえないとなると。。。

インボイスを発行してくれない卸売業者Aではなくて、同じボールペンを同価格で仕入れることができる、卸売業者Bがインボイスを発行できるのなら、Bから仕入れたいと思う訳です。だって、自社が税務署に納める消費税が減るわけですからね。

となると、卸売業者Aとしては、仕事や売上が減る可能性がでてくるわけですから、「やばい、インボイス登録しなきゃ」という動機になるわけです。

なお、インボイスには様々な特例が用意されていて、先ほどのケースでも、文房具店が税務署に納める消費税がいきなり増えないようにする救済措置があるのですが、今回は超初心者向けなので、無視します。

ただ、今回のケースではボールペンの卸売業者Aがもともと消費税を納める義務がある会社だった場合、インボイス登録事業者になっていると思います。なることにデメリットがないからです。

どのような人が、インボイスのデメリットがあるのか

では、どのような人が、インボイス制度の登録するとデメリットがでてくるか、わかりますか?

はい、これは今まで消費税を納める必要のなかった大多数の人、具体的にはフリーランスの方型なんですね。

では、なぜフリーランスの方が、消費税をもともと納める必要がないのか?

そして、取引先から仕事がもらえないからとインボイス登録事業者になることで、どのようなデメリットが生じてしまうのでしょうか?以下、詳しく解説します。

具体例⑴

今回はボールペンの卸売業者が、個人事業者Aさんとしましょう。今までAさんはボールペンの卸売業をやってきて、消費税を税務署に納めたことがありません。

では、なぜ収めたことがないのでしょうか。

実は、消費税を納めなければならない人、これを消費税の課税事業者と言いますが、この課税事業者になってしまうのは、ある一定の条件を超えた人だけなんですね。

では、その条件とはなんでしょうか?

その条件とは、2年前の売上が税抜きで1000万円を超えていた場合に、消費税を税務署に納めなければならないんですね。

つまりこの卸売個人事業者Aさんは、今まで消費税を税務署に納めたことがない、ということは、今まで年間の売上高が1000万円以下だったということになります。

ではこの卸売業のAさんが、文房具店にボールペンを下す際、文房具店から求められてインボイス登録を検討したとしましょう。そこで、メリットとデメリットを比較して悩むことになります。

インボイス登録のメリットとデメリット

では、そのメリットとデメリットとは、一体なんでしょうか?

メリットとしては、文房具店から仕事を引き続きもらる可能性があるということですね。なぜなら、まったく同じ値段でボールペンを売ってくれる仕入先があって、そちらがインボイス登録事業者だったら、文房具店はそちらの業者に切り替えてしまう可能性があるわけです。

では卸売個人事業者Aさんが、インボイス登録をするデメリットとは一体なんでしょうか?

それは、消費税を税務署に納めなければならないということです。

なので、もし仮に大口の取引先との取引が、インボイス登録事業者になることで継続できたとしても、多額の消費税の納税が発生してしまったなら、資金繰り的にはかなり厳しくなってしまいます。

それだったら、取引先に消費税10%分を減額してでもインボイスに登録せずに取引を続けさせてもらった方が、消費税の税負担、ひいてはキャッシュフローに悪影響を与えずに済む可能性があります。

こういった懸念からインボイス登録する人が減っては、国税庁としては困るわけです。

インボイス制度の2割特例とは

そのため、特別ボーナスとして特例を用意しています。それは、Aさんのようなケースの場合、消費税は預かった分の20%だけ納めればいいですよ、という特例です。正式名称を2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)といいます。

これに似た制度で消費税の簡易課税制度という計算方法があります。簡易課税は業種によって、この20%部分の数値が変わるのですが、この2割特例では業種は問いません。

という訳で、インボイス事業者に登録する場合には、それによって一体自分がいくらくらいの消費税を税務署に納める可能性があるのか?というのをシュミレーションしてみることをお勧めします。

結局は事業者の考え方次第

それがあなたにとって、金銭的な負担として大きい、と感じればインボイスの登録は控えればよいですし、いや、それでは取引先に迷惑がかかるからインボイスには登録する、という事業者さんもいらっしゃいます。

皆さん考え方はそれぞれですので、情報を自分で取りに行き勉強して、ときに専門家のアドバイスも聞きつつ、ご判断いただければ幸いです。

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栃木県真岡市 税理士 元山りょうブログ

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