まいど!もっちゃんです。
では今回は、以前に上げた記事『中田敦彦さんにみるシンガポールの税金【法人税法編】』の続きで、こんどはシンガポールの所得税を見ていきましょう。
個人所得税とは何か?
居住者の個人所得税とは?
居住者というのは、シンガポールに住んでいる人とイメージしてもらえるとよいと思います。
シンガポールの所得税は日本と同じく累進課税制度を取っています。
これは、所得を段階ごとに区切って、それぞれの部分に異なる税率を掛ける方法です。
所得2万Sドル(約162万円)までは税金がかからず、
最高税率は32万Sドル(約2600万円)以上の所得に対し、22%となっています。(2017賦課年度以降)
なので、中田あっちゃんが法人ではなく、仮に個人でYOUTUBE収益を32万Sドル以上計上していた場合は、最高税率部分でも22%の税率となります。
日本の所得税の最高税率45%と住民税の最高税率10%合わせると最大課税部分の税率は55%ですから、大きな違いですね。
ちなみに、シンガポールには地方税は存在しません。国税のみです。
注意)全体に対して22%ではありません。所得を階段状に分割し、各階層ごとにさらに低い税率を乗じて、最後に合算します。
非居住者の個人所得税とは?
非居住者というのは、シンガポール国内にいない人、と考えるとよいと思います。
税額は、次のどちらか高い方になります。
①一定税率15%で計算した税額
②居住者に適用される税額
なお、非居住者である個人の取締役報酬や、不動産賃貸収入、その他の所得にかかる
税額は22%です。(2017賦課年度~)
日本でいう居住者とは?
国内に「住所」を有し、または現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいう。
居住者以外を非居住者という、とされています。
外国人がシンガポールで就労した場合の所得税は?
オリラジのあっちゃんなんかは外国人になりますが、外国人がシンガポールで就労する場合は以下の要件で所得税がかかってきます。
①60日以下の滞在の場合→免税
②61日以上182日以下の場合
非居住者に該当し、非居住者の所得税率が適用される。
ただし、182日以下の場合は租税条約によっては免税となる場合もある。
③183日以上の場合
年間183日以上居住した場合は、所得税法上の居住者に該当し、所得税の申告義務が生じます。
また、年度をまたがって183日以上居住した場合には、またがった2年度分の所得税を申告しなければなりません。
どんな所得に所得税がかかるの?
シンガポール国内で発生した所得のみです。また、現物給与も税金の対象となります。現物給与は日本も同じですね。
どんな所得控除があるのか?
そもそも所得控除とは何か、というところですが、
簡単に言うと、国が与えてくれる概算経費みたいなものです(実際に何も経費は使ってないけど)。
それを、所得から差し引いて、残りの金額に税率を掛けます。
だから、控除が大きいと残りの所得が小さくなるので、税金が減ります。
そして基礎控除というのは、条件なしにどんな人でも使える経費みたいなもんです。
基礎控除の金額っていくらなの?
シンガポールの各種所得控除は、次のようになっています。
年齢別基礎控除
①55歳未満のすべての個人 基礎控除 1000Sドル(約8万1千円)
②55歳~59歳の就労者 基礎控除 6000Sドル(約48万7千円)
③60歳以上の就労者 基礎控除 8000Sドル(約64万8千円)
高齢の就労者には基礎控除が大きくなっていますが、これは働くことのインセンティブととらえてよさそうですね。
身障者・精神障がい者の基礎控除は、
健常者よりその額が大きくなっています。
①55歳未満 基礎控除 4000Sドル(約32万4千円)
②55歳~59歳 基礎控除 1万Sドル(約81万円)
③60歳以上 基礎控除 1万2千Sドル(約97万2千円)
いろんな所得控除が拡大してきた
シンガポールでは2010賦課年度からさまざまな所得控除の拡大が行われています。
一例をあげますと、
①主婦控除に主夫控除を加えて、配偶者控除を創設
②親や祖父母、障害者親族の扶養に対する所得控除の拡大
③職業訓練や寄付に対する所得控除の拡大
などです。
会社員の自己負担経費も控除できる?
シンガポールでは従業員が使った経費の中で、会社から精算されてないなどの要件を満たしたら、経費として所得控除が可能です。これは日本にも特定支出控除という似た制度がありますね。
例)電気代
在宅勤務後、電気代が10Sドル増えた→その差額を控除
例)通信費
仕事用のWi-Fiを設置した場合の月額利用料など
所得税の申告と納付とは?
基本的に会社員は日本のように源泉徴収されないので、自分で給与所得を申告する必要があります。
しかし、以下の場合は申告不要です。
①年間所得が2万2千Sドル(約178万円)以下の個人
②IRASから申告不要通知を受け取った場合
計算期間が日本と違う?
計算期間は、暦年1月1日から12月31日なので、これは日本と同じです。
ただ、申告期限は翌年の4月18日なので、日本より1か月ほど長いです。
なお、賦課年度という考え方があり、税務上の課税期間は申告日の属する年度ベースで認識します。
例えば、日本だと2020年1月1日から2020年12月31日分は2020年度分の申告として確定申告しますが、
シンガポールは2021年度分の申告として処理します。
税金の額を決めるのは誰?
シンガポールでは法人税と同じく賦課課税方式を採用しているため、申告のときに納税は行いません。
一応、税額の計算は納税者が行います。
ただ、その後必要に応じて税務調査があり、その後IRASから納税通知が発行され、1か月以内に納付します。
申告納税方式をとっている日本との違いは、税額の最終決定者が納税者か、国かという違いがあります。
日本の場合
納税者が税額を計算、確定申告→税務調査
シンガポールの場合
納税者がざっくり税金を計算・申告→税務調査→国が税額を確定
会社(雇用者)の義務とは?
シンガポールの会社は源泉徴収を行う必要がないものの、その代わりに従業員の1暦年の給与所得を集計した書類(Form IR 8A等)を翌年3月1日までに各従業員に通知しなければなりません。
これをもとに従業員は確定申告を自分で行うわけですね。
電子申告義務がある場合とは?
2021賦課年度において6人以上の従業員等を雇用している企業は、AISと呼ばれる電子申告を使用してIRASに従業員の給与情報を翌年3月1日までに申告しなければなりません。
会社が従業員の代わりに所得税を計算する場合とは?
会社が外国人従業員を雇用しており、その従業員がシンガポール国外に移動する場合や、従業員が退職する場合、1か月前までにその従業員の個人所得税の申告を代わりに行い、そして確定した所得税額を最後に支払う給与から差し引いてIRASに納税しなければなりません。
おわりに
シンガポールのように、すべての従業員が自分で確定申告をすれば、自分が一体どれだけの税金を払っているかという自覚を育てることができそうですね。
日本の場合は源泉徴収なので、税務署は楽できるからいいですが、企業が徴税コストを負担しており、従業員は納税の意識が低いままです。
日本のマネーリテラシーの低さ、もここに原因があるのかもしれません。
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