さて今回は、税務調査で狙われやすいポイントを解説していきます。
令和元年の国税庁による統計だと、相続税の税務調査の合計が10,635件、そのうち申告漏れが指摘された割合は8割超の9,072件となっています。
これが意味するところは、相続税の税務調査に入られたら、ほぼほぼ追加の税金を取られてしまうということです。
今回は、相続税の税務調査の対象となりやすいパターンを見ていきましょう。
富裕層が狙われる
当然と言えば当然ですが、富裕層は狙われやすいです。富裕層とは一般的に資産額が2億円以上の層を言います。
これら富裕層に対しては、国税庁の富裕層対策チームが、富裕層の申告内容や財産の移動を生前から重点的にチェックしています。
なお、所得税の確定申告で財産債務調書を提出している富裕層は税務署の調査対象になる可能性が高いと言えます。
ちなみに財産債務調書とは、その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額が2,000万円を超え、さらにその年の12月31日にその金額の合計額が3億円以上の財産か、合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を持っている場合に所有財産の明細を税務署に提出するものです。
無申告が狙われる
明らかに基礎控除額以上の財産を持っていたであろう被相続人の相続が無申告だった場合、もちろん税務署は調査対象に組み入れます。
また、基礎控除額ぎりぎりの財産で無申告だった場合でも、税務署の調査対象になりやすいと言われています。
なぜなら、税務署は「増差額」が欲しいからです。増差額とは、課税対象となる財産を追加で把握できることを言います。
たとえば、1億円の資産を持っていた被相続人の相続に関して、2000万円の隠し現金が出てきたら、2000万円の増差額をゲットしたということで、その税務調査官の成績になります。
しかし、基礎控除額ぎりぎりの家庭が無申告だった場合には、最低でも基礎控除の3600万円から、法定相続人が2,3人いれば4200万円から4800万円の増差額を得られるため、税務調査官としては効率の良い案件になるからです。
海外資産が狙われる
近年では資産運用の国際化に対応して、海外財産の状況把握を税務署は積極的に進めています。
具体的には、外国の金融口座を利用した国際的な脱税や租税回避に対応するために、OECDで作成されたCRSという共通報告基準に従い、租税条約の情報交換規定に基づいて、外国の金融口座情報を国家間で自動提供する仕組みに日本も参加しています。
申告漏れを指摘される財産とは?
令和元年の申告漏れ財産の比率は、以下のグラフのようになっています。一番割合が多いのは、高価な貴金属、骨とう品などの動産、次に現預金となっています。
その他、狙われやすい状況
その他に狙われやすいケースとして次のようなものがあります。
- 申告書に記載した相続財産額と、税務署が把握している相続財産額の差が大きい場合
- 生前5年以内に多額の預貯金が引き出されている場合
- 多額の借入金があるのに、それに見合う財産が無い場合
- 子供や孫名義の預金が収入と比較して多い場合
- 生前の土地・株式等の譲渡代金や多額の退職金が申告書に含まれていない場合
- 生前に不動産所得の申告があったのに、不動産等の申告が少ない場合
- 生前に多額の配当所得や株式譲渡所得の申告があったにもかかわらず、株式等の申告が少ない場合