それでは今回は、相続税の申告と納税について解説していきます。実は、相続税は全員にかかるわけではなく、財産の合計がある金額以下であれば相続税の申告は不要になります。
相続税の基礎控除額
相続税には基礎控除額が設けられています。これは相続税がかからない金額のラインをいいます。基礎控除額は3000万円+法定相続人の数×600万円となります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて相続人を確定させるのも、この基礎控除額を決定するためでもあります。
ですので、プラスの財産から借金などのマイナスの財産を差し引いた正味の財産が、この基礎控除額を下回る場合には、相続税の申告は不要になります。
反対に、基礎控除額を超える場合には、相続税の申告と納税を10か月以内に行う必要があります。
相続税の申告手続き
一般的には相続税の申告手続きは税理士に依頼すると思います。ですが税理士も必要書類を相続人から提出してもらわないと、正しい申告書の作成ができません。
税理士から必要書類の一覧を渡されると思いますので、これに沿って書類を集めて下さい。
遺産分割協議書
なお、相続税は最終的に遺産分割協議書をもとに、実際の相続財産の割合で相続税を、各相続人に配分します。
ですので遺産分割協議書は相続税の申告前には必ず作成しておかなければなりません。
基本的に遺産分割協議書は相続人間の話し合いで、財産の配分を決定する必要があります。税理士はその利害調整を行うことはできません。
特に書式は決まっていませんが、誰が何をどれだけ相続したかを明確に記せば問題ありません。
相続人の人数分の遺産分割協議書を作成し、署名と実印を押します。
話し合いがまとまらない場合
なお、遺産分割協議が難航した場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続きを利用することができます。
しかし、話し合いがまとまらずに調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きが開始され、裁判官が遺産の配分について審判を行います。
協議のやりなおし
遺産分割協議が成立した後に、もう一度遺産分割協議をやり直すことは原則としてできません。ただし、無効や取消の原因となる正当な理由があれば、一部または全面的にやり直すことができます。
正当な理由とは、以下の3つです。
・相続人全員の合意がある
・新しい財産が見つかった
・遺産分割協議がそもそも無効だった
遺産分割協議が無効となる場合
遺産分割協議が無効になる要件は以下の3つです。
・参加していない相続人がいた
・認知症や未成年など、判断能力のない相続人が参加していた
・遺産分割協議の中で、だまされたり脅迫されたりした
申告期限内に遺産分割協議が終わらなかったら
申告期限内に遺産分割協議が終わらなかった場合には、いったん法定相続分で相続したとした場合の税額で申告を行い、遺産分割協議が完了したら納めすぎた税金を取り戻すための更正の請求、または納付額が足りなければ追加で税額を支払う修正申告を行うことになります。
原則的に申告期限の延長はされません。
なお、遺産分割協議が完了していない状態で申告をすると、各種税額軽減の特例を使用することができません。
ただし、配偶者の税額軽減の特例や小規模宅地の特例は申告期限後3年以内に分割協議ができれば、適用することができます。
この場合には『申告期限後3年以内の分割見込書』を合わせて提出します。