それでは今回は農地の金額算定について話をしていきます。
そもそも農地は相続財産としてどのような計算をするのか、そしてどれくらいの金額になるのかということをざっくり説明していきます。
倍率方式の計算は簡単
倍率地域と路線価地域とは
農地の評価に関して、まず初めに確認することはその農地が路線価地域にあるのか、もしくは倍率地域にあるのかという点です。
これは国税庁が定めているもので、簡単に言うと路線価地域というのは、ある道路に面している土地の1㎡当たりの金額を路線価としています。
倍率地域はこのように道路に面している土地ごとの1㎡単価が決められていない地域のことを言います。
なお、余談ですが倍率地域でも全国地価マップを確認すれば、道路に面する土地ごとの1㎡当たりの金額は把握できます。
農業振興地域内の農用地区域かどうか
農業振興地域とは「農業振興地域の整備に関する法律」(農振法:のうしんほう)により指定された、農業の振興を促進することを定められた農地です。
これらの土地は生産性が高いため、宅地への転用などの制限があります。
この農用地区域内にあるか否かにより、土地の金額を計算する際の倍率が変わります。
固定資産税評価額に倍率をかける
あとは農地ごとの固定資産税評価額の金額に倍率をかけることで、農地の金額が決定します。倍率は田か畑か、山林かごとに変わりますし、先ほどの農用地区域内にあるかどうかによっても変わってきます。
なお、固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に記載があります。
または市役所で取り寄せる被相続人の名寄帳(固定資産税評価明細書)から情報を取得します。
計算例)固定資産税評価額300,000万円×倍率2.9=870,000万円
路線価地域の市街化区域農地
路線価地域にある農地は、倍率地域にある農地とは計算方法が異なります。
細かい話をすると専門的になりすぎるので、ざっくり簡単に説明します。
その農地を宅地と考えて計算する
専門用語では宅地批准と言いますが、呼び方はどうでもいいです。
要するには、農地だけれども宅地(建物が立っている土地)と同様の計算方法で処理を行う、ということです。
ベースの計算方法
先ほど説明した路線価をベースにして、その農地の形状が宅地として使いづらいものであればあるほど、㎡あたりの評価額を下げることができます。
例えば、正面の道路に対して、奥行きが広すぎる、道路に接している幅が狭すぎる、形がいびつ、広すぎる(1000㎡以上)、前面の道路幅が4メートル未満などです。
逆に複数の道路に面している場合などは利便性が高いということで、評価額が上がります。
宅地転用の造成費分だけ評価が下がる
先ほどのベースで計算した金額に、さらに宅地造成費という名目で、農地を宅地に転用する場合に必要な費用を見積もって、㎡当たりの農地の金額を下げることができます。
例えば、整地費、地盤改良費、土盛費、土留め費などです。
これらの費用を差し引いて計算した㎡あたり金額に、面積を乗じることで農地の金額を算出します。
造成費を差し引いて㎡金額が0円になったら
もし、宅地造成費を差し引いて㎡あたりの金額が0円になったらどうするのでしょうか。
実務ではまれにあることですが、この場合にはその農地は宅地にするには経済的合理性がないという判断で、純農地として近隣の㎡あたりの農地単価を参考に倍率方式で評価を行います。
倍率地域の市街化区域農地
市街化区域にある農地が倍率地域である、ということもあります。
この場合には路線価に代わって、近傍宅地価格をベースにして、先ほどの路線価地域にある市街化区域内農地と同じ計算過程をたどります。
なお、これを宅地批准倍率方式といいますが、この場合には近傍宅地価格に宅地批准倍率(国税庁が定めている)を乗じた単価をベースに計算を行います。